特定商取引法とは
特定商取引法は正式には「特定商取引に関する法律」と言い、業者と消費者の間でトラブル(中途解約の違約金など)が起こりやすい訪問販売や通信販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引(マルチ商法)など特定の商取引(契約)において、契約取消やクーリングオフによる契約解除・申込みの撤回、罰則等の制度を規定している法律です。
もともとは特定の「物品」「サービス」に対して規制する法律でしたが、トラブルを起こす業種が新たに発生する度に改正が重ねられ、現在では物品・サービスではなく特定の「(契約)形態」に該当するもの全てを規制する法律となっています。
この法律は悪質商法に関係の深い法律となっていますので少し解説してみたいと思います。
特定商取引とは?
ここでいう特定商取引とは下記の契約形態のことを指しています。
- 訪問販売
- 電話勧誘販売
- 訪問購入
- 通信販売
- 特定継続的役務の提供契約
- 業務提供誘引販売取引
- 連鎖販売取引
これらは全て悪質な契約となりやすく、以下ではそれぞれの契約形態について説明します。
1.訪問販売
「訪問販売」とは、自宅や職場に訪問して契約する契約形態です。
例えば自宅へ訪問され浄水器の設置やリフォームを勧められた等の他、キャッチセールスなどが該当します。
2.電話勧誘販売
「電話勧誘販売」は電話をかけてきて勧誘して行われる契約で、景品が当選した等電話をかけてきて呼び出して別のものを契約させるアポイントメントセールスなどが該当します。
※上記2つの契約形態に共通しているのは契約者が意図せずに訪問もしくは勧誘を受けたことから契約を締結するという点となります。
3.訪問購入
「訪問購入」とは、申し込みを受けた業者が自宅に訪問して買い取りを行うことで、主に貴金属や宝石類など高価なものを(相場より安く)買い取るケースなどが該当します。
但し家電、家具、自動車(二輪を除く)、CD/DVD・書籍・ゲームソフト類、有価証券を除きます。
※訪問購入では、呼ばれてもいないのに突然訪問したりする営業方法は禁止されています。
4.通信販売
「通信販売」とは、ご存知の方も多いかと思いますが、郵便等の通信方法により販売契約やサービス提供契約を行う方法です。
新聞、テレビ、カタログ、インターネット等の広告を見て、郵便等(郵便、電話、FAX、電子メール、インターネット等)の方法で契約を申し込むことを言います。
返品の可否・条件を広告に表示していない場合は、商品を受け取った日から8日間は解約・返品が可能です。
5.特定継続的役務の提供契約
特定継続的役務とは特定の継続的に行われるサービスのことで、この法律では以下の業種が指定されています。
特定継続的役務 | 契約期間 | 契約金額 |
---|---|---|
エステティック | 1か月以上 | 5万円以上 |
美容医療 | ||
語学教室 | 2か月以上 | |
家庭教師 | ||
学習塾 | ||
パソコン教室 | ||
結婚相手紹介サービス |
これらは後述するクーリングオフ期間経過後でも解約できる「中途解約」が同法で認められています。
中途解約はクーリングオフによる解除とは異なり、提供済みサービス料や解約料(数万円)の支払いが必要となります。
6.業務提供誘引販売取引
「業務提供誘引販売取引」とはどのような業者が該当するか、同法における定義から要約すると以下のようになります。
物品販売またはサービス提供(それらの斡旋を含む)の事業で、
その物品又はそのサービスを利用する業務に従事することにより利益が得られると相手方を誘引、
その者と特定負担を伴うその商品の販売又はその役務の提供(それらの斡旋を含む)に係る取引をするもの
もっと簡単に説明すると、商品購入や方法、資格などを身につけることで継続的な利益や仕事が得られる等と誘い、そのためにその業者が販売する商品を買わせたりサービスの契約をさせることです。
この契約形態は本サイトで説明する詐欺や悪徳商法(「内職商法」「モニター商法」「ドロップシッピング詐欺」等)にも関係が深く、そういったケースでは実際には事前に言われていたほどの利益や仕事を得ることができず高額商品・契約の負担だけが残ります。
7.連鎖販売取引
連鎖販売取引を同法の定義から説明すると以下のようになります。
物品(施設利用又はサービス提供を受ける権利を含む)の販売又は有償サービス提供(それらの斡旋を含む)の事業、
それらの再販売、受託販売又は同種サービス提供(それらの斡旋をする者)を利益を得られるとして誘引、
その者と負担を伴うその商品の販売又は同種役務の提供(それらの斡旋)に係る取引をおこなうこと
いわゆる「マルチ商法」のことで「ネットワークビジネス」や「MLM(マルチ・レベル・マーケティング)」等という言い方をされることもあります。
この連鎖販売取引は投資系詐欺を拡大する方法として利用されやすい傾向があります。
特定商取引法における救済措置
特定商取引法は、もともとトラブルの多い契約方法や悪質な業者と契約してしまった人を救済するためにできた法律と言えます。
救済措置の内容としては以下の2点がポイントとなります。
- 契約の取消
- クーリングオフ(契約解除、申込みの撤回)
契約の取消
特定商取引に該当する契約に「不実の告知」もしくは「重要事項の不告知」があった場合は契約の取消を行うことができます。
不実の告知とは契約を締結するにあたり説明や重要事項の内容に虚偽がある、「重要事項の不告知」とは契約に関する重要事項(料金形態や支払い条件など)を故意に告げない等が該当します。
取消を行うと事業者と消費者に「原状回復義務」が生じます。原状回復義務とは契約前の状態に戻す義務のことで、すでにお金を払ってしまった場合は取り戻すことができます。
消費者契約法と異なる点は、業者側に「罰則」があることです。
クーリングオフ
「クーリングオフ」とは「一定の期間内であれば無条件で契約の解除(または申込みの撤回)が可能」という特定商取引法における特別な規定です。
クーリングオフ可能な期間
同法に定められたそれぞれの契約形態によってクーリングオフ可能な期間に多少の違いがあります。
契約形態 | 期間 |
---|---|
訪問販売・電話勧誘販売・訪問購入・特定継続的役務の提供契約 | 8日間 |
連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引 | 20日間 |
クーリングオフ可能な期間は、契約締結後に「同法で定められた形式の契約書(クーリングオフ可能な旨の内容等)」を受け取った日から起算されます。口頭契約のみや不備のある契約書であった場合は期限経過後もクーリングオフは可能です。
※通信販売は商品受け取りから8日間は返品可能、返品の可否・条件を広告に表示していなかった場合に限られます。
クーリングオフの仕方・書き方
クーリングオフは相手方に契約解除する旨の通知を確実に行う必要があります。
契約解除通知はハガキや郵便などでも可能なのですが、悪質な業者を相手にすることを考えた場合、出した日付、通知した相手及び内容が確実に証明できるようにするために、配達証明付きの[内容証明]で通知することをお勧め致します。